かつて読んだ本にこんなエピソードがあるのを、覚えている。
ある画家が天使を描こうと思い、ぴったりの子どもを見つけた。そして天使を描いた。
10年くらいたって、今度は悪魔を描きたいと思った。そしてピッタリの若者を見つけた。
モデルとなった若者は、アトリエでふと天使の絵を見つけて、それをまじまじと見つめる。
実は、天使のモデルになった子どもは、その若者だった。
同じ人間が、暮らしかた、生き方、普段の考え方、感情と思考の傾向性により、天使として描きたいと思うほどの顔と、悪魔を表現したいときの顔つきにもなる。ということだ。
いま、それを、思い出している。
昨日、職員の一人と話をした。この数年、辛い思いをしていた方だ。
いま、それが終わり、泣いてはいたが、本当にスッキリとした顔だった。
やりきったのだ。やりきると、同じ顔なのに別の顔だった。私の心さえ洗われるような、その方のお顔だった。