きょう偶然、テレビをみたら「鳴門秘帳」をやっていた。そこで、かつてハッとしたことのある言葉を、聞いた。
「どうせ月夜の晩に引いた風邪。骨の髄まで引いてやる」
とある擦れっからしの女性が、恋をしてしまい、とことん忘れられない様子を表現している。
私の読書の記憶とは少し違う。だが、言い回しの妙は変わらない。
吉川栄治は天才だ。表現の天才だ。物語をつくる天才だ。
月夜の晩に引いた風邪、ですぞ。
すれっからしの女性の、しかし恋には擦れていないことを、表現している。当時の文学少女だった私は、そう読んだ。
そして偶然にも、今日のFacebookに、友人が、今日の三日月の写真を載せた。
この月の夜。この不穏な世界の何処かで。恋に落ちた人も、きっといる。